腰椎椎間板ヘルニア 手術しないための対処法

0 まずはヘルニアかどうかの確認

ヘルニアの症状

 ・前屈み、足を持ち上げると痛い

 ・くしゃみなどお腹に力が入ると痛い

 ・腰だけでなく、足の方まで痛み、しびれがでることも

 

「腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン」によると、診断基準は以下の通り。

1.腰下肢痛を有する(主に片側、ないしは片側優位)
2.安静時にも症状を有する
3.SLRテストは70°以下陽性(ただし高齢者では絶対条件ではない)
4.MRIなど画像所見で椎間板の突出がみられ、脊柱管狭窄を合併していない
5.症状と画像所見が一致する

(引用:腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン)

 

原因

椎間板への繰り返す負荷によって、椎間板が損傷、炎症して椎間板性の腰痛

椎間板が変性、中の髄核が移動、神経を圧迫することでヘルニア

椎間板が変性、関節への負担が増えることで、関節性の腰痛へ

(なかには椎弓への負荷によって分離症がおこり、関節への負担が増えても関節性の腰痛へ)

特徴

20~40代の若い男性に多い

手術しても保存療法でも10年以上では成績は変わらない(10年以内なら手術が勝る)

手術で良くなるケース

男性、画像の異常所見、最近痛くなった、メンタル正常、休職期間短い、労災ではない

例えば、画像で「L5がヘルニア」といわれたら、

「お尻からももの外側、すねから足の甲に感覚異常があって

足の親指の力が入らない」のが画像と症状が一致しているということです

(ここで、少し脱線

ヘルニアの主な症状は、痛み・しびれです

でも、神経の圧迫では、感覚異常と、筋力低下しか起きません)

つまり、原因はヘルニアによる神経の圧迫だけではない(画像でみて、神経を70%圧迫されても症状はでない)

考えられる原因は、神経の炎症、損傷、血流障害です

では、どうしてそれが起こるのか?主に2つ

背骨をつぶすような力がかかり続けている :筋肉が硬くなったり、骨の位置がずれて、物理的ストレスが加わっておこる

回復力の低下 : 生活習慣、内臓の不調、によっておきる

手術だけでは、物理的圧迫が軽くなるだけで、

この2つの原因は解決されていないので、再発するのです。

 

でも、緊急に手術しないといけないケースもあるので

 手術適応(手術しないといけない)かどうか確認

  ・膀胱直腸障害(おしっこ漏れたり、全くでないなど)

  ・痛みや筋力低下がひどくて、生活に支障がでている

  ・2~3か月保存療法やっても変化ない

 

痛み始め / 慢性期 によって、原因と対処法が違うのでどっちか確認してみましょう

 痛み始め(急性期)の原因と対処法

  原因は、神経の炎症が多く、神経の損傷は少ない

  神経損傷

症状

  痛みの感じが、

  うずく痛み、灼けつく痛み、突き刺されるような痛み、正座のあとのビリビリ感なら、神経損傷も疑います

対策

  これが原因なら、手術しても変わりません。(でも、手術で痛みがとれる方がいるのは、損傷が原因ではない)

  神経は圧迫に強く神経を圧迫しても、感覚異常や筋力低下はあっても、痛みは出ません

  一方、けん引には弱く、

  筋肉や骨で引っかかったまま伸ばされて炎症や損傷することが考えられる

  そこが動かないような工夫(コルセット、動かし方)をしつつ

  神経のすべりを邪魔している筋肉をほぐし、関節の動きを滑らかにします

  それ以外のところは動かしたり、温めて血流を確保したほうが回復は早いでしょう

  ただし、神経の損傷にはいくつかポイントがあります

   ・治るスピードは1日1ミリ程度

   ・神経を包む鞘が損傷した場合、治るかどうかは五分五分と言われます

 

  炎症

症状

  安静でも痛い、どんな方向に動かしても痛い場合は炎症が強い

  薬や注射などで、炎症を抑えてから

  筋肉や血流の問題を施術するのもいいと思います。

 

 神経の問題を見るのは、筋力テストと感覚異常のテストがあります

 痛みやしびれがどの範囲ででているのかわかれば、だいたいどこが原因かわかります

 デルマトーム(腰はL1~L5、仙骨S1~5)に当てはまるかみてください

対策

炎症も損傷も基本は同じ

(ちなみに、椎間板が飛び出ていても、数か月のうちにマクロファージが食べてくれるので

でっぱりは段々小さくなるとのこと。ただし、圧迫する原因がとれてなければ、

でっぱりはそのまま残るでしょう)

 

筋肉や血流の問題

症状

 上の図に当てはまらず、

 広いエリアの異常だったり、足先だったりすると、血流の問題から、神経や筋肉の痛みやしびれが混じっていることが疑われます。

例えば、寝返りで痛いのは、筋肉の問題が多い

  仰向けで痛いなら、腸腰筋(ももと体をつないでいる筋肉)や足の問題、

  夜間に広範囲の鈍痛なら内臓の不調も考えられます。

 

対策

 患部への刺激を減らすことと、回復しやすい環境を整えること

 つまり筋肉を柔らかくして、関節を滑らかに動かすこと

 そのためには、生活習慣のうち、負担の大きいところから少しずつ変えてみることです

例えば

 運動(血流を促進する)だけでなく、

 食事(いい油をとること、小麦などを減らし、リーキーガットを防ぐこと)

 睡眠をしっかりとること、

 排泄(腸がうまくいかないと、肝臓や腎臓の負担が増え、血液も汚れやすくなるため)まで気を付けると炎症は起きにくい

 などがあります。

 

② 痛み出して長い(慢性期)なら、

 繰り返しになりますが、主に2つ

背骨をつぶすような力がかかり続けている :筋肉が硬くなったり、骨の位置がずれて、物理的ストレスが加わっておこる

回復力の低下 : 生活習慣、内臓の不調、によっておきる

手術だけでは、物理的圧迫が軽くなるだけで、

この2つの原因は解決されていないので、再発するのです。

 

 直接痛みを出しているのは筋肉です(その奥には血流の問題が隠れています)

 その状態が長期化すると、関節が壊れて変形していきます。

 

 念のため、関節の問題はないか?チェックしてみましょう

A 背骨の関節(椎間関節)

 症状 腰~お尻、太ももまでの痛み、ねじる、休んだ後の動き出しで痛い

     立っていると痛い

     腰を反る(ヘルニアは前屈で痛い)

B 骨盤(仙腸関節)

  症状 お尻(上のほうにある骨のでっぱり)ピンポイントの痛み、鼠径部の痛み

SLRテスト(ー)(足を伸ばしたまま持ち上げてもらっても痛くない)

     片足立ち、前後開脚、長時間座位で痛い

     しゃがみこんで痛い

 関節の問題であれば、

 ・背骨の関節(椎間関節):腹圧を高めるためにコルセットの使用やインナーマッスルを鍛える

 ・骨盤(仙腸関節):骨盤用コルセットの使用

  さらには、出産時の骨盤底筋の損傷や筋腫など骨盤の中の内圧が高まって、

 より不安定になることも考えられるので、中の問題も見ていくといいです

 不安定       → 自前の筋肉、それが無理ならコルセットやテーピングなどを利用

 硬くて動きが少ない → 筋肉を柔らかくすること、全体のバランスをとって負担を分散させること

 

ただ、変形や拘縮など壊れている部分が多いと限度があります

最終手段として、手術はとっておくといいと思います

 

これらに当てはまらなければ

椎間板による神経の炎症だけでなく、

筋肉や血流の問題の可能性もあるということで

対策

 ・ まずは椎間板への負担を減らすことで、症状は改善していきます

 ・ さらに、身体が回復するように生活環境を整えると根本的な改善につながります。

血管、血液の病気の有無、手術など既往歴、内臓の疲れ具合など体調によって、回復のスピードや限界は変わります)

 

 

背骨→椎間板への負担を減らすポイントは、以下の3つです。

 ① 背骨~骨盤がなめらかに動くか

 ② 股関節まわりの筋肉が柔らかいか
③(腹直筋、脊柱起立筋を過剰に使わず)多裂筋、大腰筋が働いているか

これが揃えば、腰への負担は軽くなり、痛みは出にくくなります。

 

  ① 背骨~骨盤の動きをざっくりチェック

背骨

四つ這い →お尻を後ろに引いて踵につける(お祈りのポーズ) 

         背骨が丸まらず、膝が胸につかないなら  背骨硬い

  ・骨盤

    前屈でチェック(骨盤を圧迫して痛みが変るかチェック)

    仙骨(しっぽの骨の下のほう)を押しながら前屈すると楽 → 前傾(前に傾いている)       → ハムの問題多い

    仙骨(しっぽの骨の上のほう)を押しながら前屈すると楽 → 後傾(後ろに傾いている)これが多い → 四頭筋、腸腰筋多い

    腸骨(骨盤の後ろと前のでっぱり)を横から押しながら前屈すると楽 →不安定          →大殿筋、腹横筋多い

② 股関節の動きをチェック

  ・股関節

    立位(足揃えて、肘伸ばして両手握る)左右に捻じる 90度が目安 左右どちらが硬いか

    座位(肘伸ばして両手握る)左右に捻じる 50度以下なら背骨が硬い

                        50度以上なら股関節が硬い

    座位(膝90,股関節90で座る)ひざ下を内側に捻じる    40度以下なら硬い

                    ひざ下を外側に捻じる    30度以下なら硬い

   股関節周りの筋肉のチェック

    仰向け  膝を抱えて   膝が胸につかないなら ももうら(ハム)硬い

    仰向け  片膝かかえて 反対の足をベッドからおろした時 おろしたももが浮いてる→腸腰筋硬い

                                膝下が伸びる→大腿直筋硬い

                                太ももが外へ→大腿筋膜張筋硬い

   

  ③ お腹の安定(大腰筋、腹横筋の強化)

前屈で骨盤をチェックした際、

腸骨(骨盤の後ろと前のでっぱり)を横から押しながら前屈すると楽 →不安定  →大殿筋、腹横筋多い

 特に、くしゃみなどお腹に力が入ると痛い場合は強化すると、椎間板にかかる圧力が分散するので、楽になります。

  

  

  腰痛=腹筋を鍛えればいいという話もありますが、闇雲に腹筋や背筋運動をすることが良いわけではありません。

  背骨の奥(多裂筋など)やお腹の奥(腸腰筋)にあるインナーマッスルによる細かい制御があってこそ、

  腹筋や背筋の大きな筋肉がうまく働きます。

  大きな筋肉を繰り返し使う姿勢や動作パターンになると、ギクシャクした動きになり、

  ピンポイントに負担が強くかかってしまいます。


それが好発部位でもある、L4/5、L5/S1なのです。

 

② 生活環境も整えて血流回復する

 

具体的には

1 お尻、ももの前後、内もも、脇、背骨の筋肉をゆるめ

  腸腰筋のストレッチ

  足からの影響があるときは、足の筋肉もゆるめる

 

 2 お腹温め、マッサージ、腹式呼吸

   水分多めにとり、腸内環境も気を付ける

  (便秘でなくてもガスっぽいとか、バナナ3本分でてなければ

   本調子ではないので、発酵食品、食物繊維、油、塩などの食生活や

   薬、アルコール、タバコ、コーヒーなど見直す)

 

 

一人一人状態が違うので

専門家にみてもらうことをお勧めします。

 

当院では

ゆがみを戻して循環を改善、

硬くなった筋肉をほぐしたり、背骨のつまりをとったり

するような施術を行っています。

また、根本的な解決にむけて生活改善のアドバイスをしたり

自分ではできない方には、アイテムを使う方法もあります。

お困りでしたら、一度ご相談ください

手術は最後の手段にとっていても遅くないと思います

 

 

おまけ

筋肉の痛みのうち、トリガーポイントという考えがあります

(負担がかかり続けることで限界に達して固まる。ちょっとした刺激で神経痛のような痛みが広がる)

持続圧迫などで解除。

筋肉同士の滑りが悪いときは、一方を圧迫したまめ動かすと滑りがよくなる

以下、股関節、太ももまわりの筋肉をまとめておきました。

 

大腿筋膜張筋

トリガーポイントは筋腹の中央辺り
関連痛は大腿外側に

後方の中臀筋、前方の大腿直筋との滑走障害が起こりやすい。

前者は持続圧迫、後者は筋間に指を入れつつ股関節運動。

中臀筋

トリガーポイントは起始部の腸骨稜外側辺り、関連痛領域よりやや外側
関連痛は臀部全体の深部に

前方の大腿筋膜張筋、後方の大臀筋との滑走障害が起こりやすい。

大臀筋

トリガーポイントは仙骨付近、坐骨結節付近に出現。
関連痛は臀部全体に出現。

前方の中臀筋、下方のハムストリングス・大内転筋との滑走障害が起こりやすい。

大腿二頭筋

トリガーポイントは筋腹中央辺り
関連痛は大腿後面外側〜膝窩辺り

上方の大臀筋、遠位部で短頭と長頭、外側で外側広筋との滑走障害が起こりやすい。

前者は持続圧迫、後者は筋間へ指を入れつつ膝関節運動。

半腱・半膜様筋

トリガーポイントは筋腹中央辺り
関連痛は臀部〜大腿後面内側〜下腿後面内側

上方の大臀筋、全域で半腱様筋と半膜様筋、内側で大内転筋との滑走障害が起こりやすい。

外旋六筋

梨状筋の下を坐骨神経が走行しているため、外旋六筋による坐骨神経への影響も考えられる。

股関節屈曲+内転+内旋→外閉鎖筋、大腿方形筋
股関節屈曲+外転+内旋→それ以外の筋群

伸張されるため、その位置でストレッチや等尺性収縮をかける。

 


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